春になると思い出す、ちょっと特別な卵
こんにちは Tinaです。
長い間クラフトのワークショップに携わった経験を活かして
現在はアメリカからものづくりの楽しさを発信しています。
春になると、カラフルなイースターエッグを見かけるようになりますよね。最近は日本でもあちこちで可愛い卵の飾りがたくさん並んでいます。
そんないろんなイースターエッグがある中で、
今回はちょっと珍しいエッグアート「ピサンキ」のお話を。
このピサンキはウクライナに古くから伝わる伝統工芸で、
本物の卵の殻に、蜜蝋で模様を描いて染めて…を繰り返して作られるろうけつ染めという技法を使って作られています。
ただの飾りではなく、
ひとつひとつに願いが込められている卵。
今日はそんなピサンキの世界をご紹介します。

ウクライナに伝わるエッグアート「ピサンキ」とは?
ピサンキ(Pysanky プィーサンキ)は、東欧・ウクライナで古くから作られてきたエッグアートで、イースターエッグよりも歴史が古く、キリスト教がウクライナに入る前のスラブ民族の自然崇拝、太陽信仰に由来する、とされています。(諸説あり)
名前の語源は「線を描く」という意味の言葉で
その名の通り、描いていくことで模様を作り上げていきます。
使うのは、本物の卵の殻。
そこに蜜ろうで線を描き、染料で染める工程を何度も繰り返して、
複雑で美しい模様を完成させていきます。
そしてこの模様は、それぞれ意味を持っています。


ただ美しいだけでなく、「願い」や「祈り」を込めて作られてきたピサンキは「悪いことを封じ、良いことを呼び込む」とされていたようで、昔の人達は家を建てたとき、子どもが生まれたときなどに「お守り」の意味を込めて様々な意味を持つ模様を組み合わせて、ピサンキを作って贈りあっていたそうです。
ピサンキの出会い
私がピサンキに出会ったのは、アメリカ・ミネソタ州北部、ヨーロッパ系の移民の多いエリアに住んでいた頃のこと、作り方を教えてもらったのがきっかけでした。
細い線で模様を描いていく工程や、染めて描くという工程を何度も重ねていく独特の技法。
そして何より、
いつもは捨ててしまう卵の殻が美しい工芸品に生まれ変わる、という、純日本人には知りえなかったアートの世界。卵に願いを込めて作って飾る、という伝統文化の奥深さに強く惹かれて、出会ったその時から大好きになり、夢中で何個も作り続けました。
その後、日本に帰ってからもその魅力を伝えたい、と10年以上にわたって
ピサンキの作品を作り、様々なところでピサンキの作り方を教えてきて今に至ります。
今は年を重ねて細かい作業は少し大変になってきましたが、
この技法の面白さや魅力は、今でも変わらず大好きです。


過去の作品や教室の様子などはこちらのInstagramからどうぞ
cue’e eggは私のピサンキ用アカウントです。
ピサンキの作り方
ピサンキに欠かせないのが、少し特殊なペンに似た道具「キスカ(キストカ)」。
このキスカの先端をロウソクの火で温め、蜜ろうを熱しながら、蜜ろうをインク代わりに卵に線を引いていきます。


作り方動画、こちらがとても分かりやすいです。
① 卵の準備
中身を抜いた卵の殻を用意します。
穴の開け方はこちらも併せて参考にしてください。

一つ前のブログでは道具を使わない手法を紹介していますが、このように注射器のような道具で中身を取り出しています。(中身は毎回料理やお菓子作りに使います)
② 鉛筆で下書きして蜜ろうで模様を描く


③ 染料で染める

④ 蜜ろうで描く → 染める を繰り返す
蜜ろうで覆った部分は染まらないため、
色を重ねることで模様が浮かび上がってきます。(のちに図解で紹介します)
⑤ 蜜ろうを溶かしてふき取る

最後に蜜ろうを溶かすと今まで隠れていた色が現れ、鮮やかな模様が完成します。
この蜜ろうを溶かす工程がピサンキの一番のクライマックスで大好きな瞬間。
⑥ 完成

この工程、実際にやってみると本当に面白くて
「どう仕上がるんだろう」というワクワクがずっと続きます。
※一部、生徒さんの作品を掲載させていただきました
この一連の流れを図解にしたのでこちらも参考に。

作ることで感じるピサンキの魅力
ピサンキの魅力は、完成した美しさだけではありません。
ただひたすらに線を描いていく、この時間は心がスーッと落ち着き、ヒーリング効果抜群なのです。
細い線に集中して、
ゆっくりと模様を重ねていく。
頭の中が空っぽになります。
その時の気分や、選ぶ色、手の動きで、
すべて違う作品になる。
そんなところも、このエッグアートの魅力だと思います。

イースターと卵の意味
イースターでは、卵は「命」や「再生」の象徴とされています。
イエスキリストが復活されたとされる復活祭イースターにまさにぴったりですよね。
長い冬を越えて、春に新しい命が芽吹くように、
卵もまた新しい始まりを表す存在。
ピサンキも、そんな意味を持ちながら、
さらに「願い」を込める文化として受け継がれてきたのかもしれません。
現代ではインテリアとして楽しむことも多いですが、
その背景にある意味を知ると、また違って見えてきます。
世界にはいろんなイースターエッグがある
カラフルに塗ったもの、
可愛くデコレーションされたもの、
シンプルなもの。
イースターエッグは主にヨーロッパ各地で様々な技法で作られています。
木製の卵にペイントしたり、切り紙を貼って装飾したり。
その中で、
こんな風に祈りを込めて作られてきた卵があること。
それを知るだけでも、
少しこの季節が特別に感じられる気がしませんか。
もし興味を持たれた方は、
ぜひ一度、ピサンキの世界をのぞいてみてください。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

出典:Instagram cue’s egg

